日本の水道は危機を迎えている。水道事業を経営するのは小さな事業体が多い。設備の老朽化は著しく、人口減少でますます財源も厳しくなる。官民連携や民営化が叫ばれている中、5月に社長に就任した東京水道サービスの野田数さん(46)は日本版の「水メジャー(巨大企業)」を目指すとの“大志”を明らかにした。(天野健作)
--どのような水道事業を目指すか
「(料金の徴収業務などを担う会社)PUCと統合し、水道トータルサービス会社として日本最大規模になる。東京水道グループには、120年の歴史に裏打ちされた世界最高レベルの技術力があるので、国内外の水道事業に貢献していく『日本版水メジャー』を目指して、大きく飛躍したい」
--ヴェオリアやスエズなど海外の水メジャーは強い。伍(ご)してやっていけるか
「今年10月の改正水道法の施行を機に、それぞれの水道事業体で広域連携や官民連携の検討がさらに進む。より一層の外資の参入が想定される。東京水道には多摩地区の都営水道一元化による広域化のノウハウがあるので、国内の水道事業体に積極的に協力していきたい」
--海外展開はどのように行っていくのか
「これまでも海外展開はしており、途上国への支援事業的な取り組みが多かった。海外事業に豊富な経験を持つ水道関連企業と、情報の共有を行いながら途上国以外も検討していきたい」
--都の「団体」から脱却するのか
「それはない。都民への水の安定供給に取り組むのが私たちの役目だ。東京都はいわゆる水道民営化を予定していない。私たちは都からの受託事業を主体としつつ、自主事業として国内外の水道事業体への貢献を行っていく。今年4月からの新制度で『政策連携団体』に位置付けられたので、都に対して政策提言を積極的に行っていく」
--巡回点検で虚偽報告があったとして2月に指摘を受けた。厳しい目が向けられているのでは
「研修会を実施し、コンプライアンス(法令順守)推進会議も定期的に開催するようにして意識を定着させていく。意識改革だけでなく、懲戒処分の指針を明確にし、厳格化した」
--都の職員の天下り機関との批判もあるが、プロパー(生え抜き)社員の底上げは
「プロパー社員の待遇改善を行っている。具体的には、昇進に要する期間を短縮し、初任給を上げ、プロパー社員の給与の底上げを図る。都の職員OBは高度な技術を持っているので、都からの受託事業の幅を広げ、プロパーへの技術継承を推進する」
--社長就任までの経緯は
「小池百合子・東京都知事から話を頂いたとき、即断即決、即答した。私自身が知事特別秘書や議員時代に水道に関わることが多く、やりがいと問題意識を強く持っていたからだ。地元には、貯水池や浄水場があり、東京水道の関係者が多く住んでいた。自身の生い立ちにおいて東京水道グループは欠かせない存在だった」
◆のだ・かずさ 東京都東村山市出身。平成9年、早稲田大卒業後、衆議院議員時代の小池百合子氏の秘書を経験している。平成15年、東村山市議になり、2期目の21年に辞職、同年の都議選で当選。28年に小池知事の特別秘書に任命され、29年「都民ファーストの会」の代表に就任。31年3月に特別秘書を退任し5月から現職。
Source : 国内 – Yahoo!ニュース